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 吾輩は根暗である。職歴はまだ無い。端の多い生涯を送って来ました。――みんなが当たり前に持っている見えないモノが生まれつき持っていない「私」。たった一つだけ足りない、それだけで日常は異常を孕み始める。常識というような空漠たる概念を、どう学べばいいか知らないし分からない。けれど常識はそれを決して許さない。これはつまらない絶望と希望で構成された日々の中で「私」を考え、そして失敗するまでの軌跡譚……という執拗な説明文から筆者(LD:学習障害)の悪癖が分かる共感度0%な長文ブログです。

タグ:母

 正月のおせち料理が嫌いな人がいる。

 かく言う我が家も元々そうだった。

 発案者の父はおせちはおろか正月そして季節イベント自体も嫌がっていた。正月を祝うものは「崇拝」、そして季節的イベントは全て「洗脳」と言い捨てる始末。その時期その時期のイベントを祝う民衆に何か侮蔑の感情を抱いていた。

 ケーキも、そばも、その料理自体は普段食べていても、そこに何か特別な意味があることで一気に嫌いな料理になるのだ。

 だけど、それも10年ぐらい前から我が家の食卓事情も徐々に変更していき、この数年はわりとキチンとしたおせち料理を食べられるようになった。過去の父が決めたルールに自身が少し飽き始めたからだ。だから(事前に提案して)自身がOKだと思ったものは食卓に並べられる。

 そのおかげでクリスマスケーキも年越しそばもその祝う日に食べられる傾向になった。

 よそのアンチおせち主義者はどうなのだろうか。

 実は我が家の身近にも何例かいた。

 私や兄が生まれる少し昔、正月の挨拶回りで父が勤めていた会社の上司(副社長)宅に行った際、昼食がわりに食事を頂くことになった。

 その家庭はおせち料理に好きなものがないので、毎年正月にはカレーを食べるのがルールだった。もちろん理解できる理由である。ただ面白いのが、その家庭でカレーを食べるのは1年で正月だけなのである。

 普段もカレーが好きだから正月にカレーを食べるわけでもなく、むしろ逆なのだ。普段カレーを食べないから、おせちのない正月に食べることになったのだ。

 それは単にカレーという形をしたおせち料理ではないか。

 そもそもおせち料理は年に1回だけ食べられる豪華な料理をおめでたい正月に食べる習慣が始まりだ。その理論で行くと、年に1回だけ決まって食べるものは「おせち料理」の資格があるのだ。

 たしかにおせちを食べなかった期間の我が家の食卓には必ずおもちは並べられていた。鍋に入れる、お好み焼きに入れる、細かく切ってたこ焼きに入れる(オススメ)などおもちを使う場面は年間で何度もあるが、おもち単体を食べるのは正月ぐらいしかなかった。

 なんだ、昔からおせち食べていたんじゃないか。

 他にも正月はラーメンを食べる家庭もあったが、そこも同じく普段食べる習慣はなかった。もしかしたらうまい棒も毎年正月だけ食べていたら「おせち料理」に昇格するかもしれない(めんたい味を海苔で巻いて食べると明太子おにぎり味になって、断然美味しくなるからやってみてほしい)。

 桜も春にだけ咲くから春の風物詩だろうし、セミも夏にだけ現れるから夏の風物詩になる。

 もし季節に関係なく雪が降ったらどうなっていたか。

 まだ最初は異常気象として報道機関総なめで「狂ってる!」と言うかもしれないが、5年10年も続けばニュース番組の綺麗なお天気お姉さんが「お盆シーズンは北西からの強い風により冷たい雨もしくは雪が降るでしょう」と淡々に読み上げるかもしれない。

 それこそ昔では考えられなかった冬にかき氷を食べる行為も生まれるかもしれない。一見おかしく書いてみたけど現在どうだろう。暖房器具を点けながらアイスを食べる人は相当いると思う(自分がそうなんだが)。

 むしろ夏に食べるアイスより一段と美味しく感じてしまう。

 何でだろう、背徳感?

「タバコとお酒が最も美味しく感じるのは19歳まで」の理論と同じだろうか。

 実を言うと、まだおせち禁止期間のとき、正月に父に隠れて母と一緒にキッチンでミニミニおせちセットを食べていた(兄は偏食家なので不参加)。

 何でだろう、そのときのおせちが1番美味しかった。

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朝日新聞出版
2014-11-07

【あとがき】

 副社長さん宅に挨拶回り行った際、カレーを出されて父はボソッとひとつ言いました。

「おい。帰るぞ」

 言われた母も、そこにいる副社長さんもキョトンとなります。そして続く決め手の一言。

「俺、カレーがいっちばん嫌いなんだよねぇ」

 相手が副社長さんでも普段カレーが好きな父のセオリーは一切ブレません…。

 副社長さんはどう思ったのか。

「そ、そうか。渡辺くんカレーが嫌いなのか。それはすまないことをしてしまった。本当にすまん…」

 そう、めちゃくちゃ良い人なんですよ。

 しかもウチの両親の仲人さんでもあるのに、そんな態度に出たんですよ。横にいた母なんか「本当にすみません…本当にすみません…」と副社長さんに平謝りし続けて、一気に場の空気が悪くなりました。ほんと何考えてんだ…。

 終いにはキッチンにいる奥さんに「何か他のものはないか?」と聞きに行って、向こうもカレーの予定だったから他の用意がなくて「どうしましょう、カレーしかない」と困った事態になる悪循環。

「○○が好きな人に悪い人はいない」の応用で「おせちが嫌いな人に良い人はいない」と本当に思います。

 ちなみに父は仕事面では社外でも有名なぐらい超有能な技術者だったので、そんな程度では評価がブレませんでした。やっぱり社会は実力がモノをいうんですねぇ…。
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 突然だが、赤ちゃんが産まれてから約3ヶ月辺りを過ぎると区役所から「定期検診受診の通知」が届く。

 これは3,4ヶ月など特定の時期を過ぎた赤ちゃんの健康状態を見るもので、各地域の近くの病院や保健センターで無料で受診する。

 この定期検診では問診、心音、首すわり、股関節など9つを調べるのだが、その中に『大泉門』という項目がある。

 大泉門とは、おでこと頭頂部の間にある菱形をした柔らかい部分で、産まれたばかりの赤ちゃんはまだ頭蓋骨が未熟で完成しておらず、ここから1歳半まで掛けて周りの骨の成長による重なりによって閉じていくのだが、そうすると逆算から3、4ヶ月には「このぐらい閉じてるよね?」という規定数値が決まる。

 この項目では、その大泉門の現在閉じてる距離を測り、規定内かどうか調べる。

 距離が長かれ短かれ、ほとんどの赤ちゃんがパスする項目だが、私の場合は……。

「ちょ、ちょっとここで待っててください!」

 私のを測った看護師が診察室を突然飛び出た。

 ……またそういうパターンか。

 廊下へと消え去って数分後、その看護師は見るからに「ベテランの先生」を連れてきた。

 一連の話を聞いたであろうその先生も私の大泉門を測り、寝そべる私の腕を持ち上げて、何かブツブツと考えた末にこう言った。

「お母さん、お子さんには注射打てませんね」

「なぜですか?」

「いや、だって腕持ち上げたお子さん見てください」

 そこには首が座ってないにしろ有り得ないほど頭部が後ろに落ちてる私の姿があった。

 長らく一緒に過ごして鈍化した母も、これには「あー……」としか言えなかった。

「正直こんなにクラゲみたいな子、見たことないよ。これは脳に何か異常あると思うから、何処か専門施設で詳しく調べたら?」

 ズバズバと言い渡す先生。(※実際はもっとオブラート包んだ説明)

「はい、わかりました…」

 グゥの音も出ない母。

 とりあえず特殊なカルテを書いてもらい、後日に専門施設にて精密検査を受けることになった。

 それと同時並行に、様々な知人のツテから特殊な乳幼児の診療に詳しい先生に事情を話して直接診てもらえることになった。

 数週間後、都心から外れた閑静な地帯にある専門施設。ここで「ダメ」と言われたら「本当にダメ」と認定されるレベルまで来ている。

 専門医はどう見るか。

 私たち親子は入室した。

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国光オブラート

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【あとがき】

 言い渡された帰宅途中の電車内にて。


「あんた…怖くない?」


「グゥー」


「…そっか」
 
 ……という都合のいい妄想寸劇。

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 今までのトラブルが嘘のように病室内は穏やかだった。

 起きてるものの私は静かにくつろいでいて、そんな私を母は静かに抱えており、その横には静かに見守るスタッフさんもいた。

「もうすぐ赤ちゃんに食事を与える時間です」と用意されたほ乳瓶が母に渡された。

 聞いた話によると、赤ちゃんが産まれた瞬間から授乳が出来るわけではない。人によっては直ぐ出来る人もいるが、この母乳の出はその人の体質に左右されるので、基本的に授乳が出来るまでは赤ちゃんはほ乳瓶を飲んで待機する。これは犬でも猫でもそう。ましてや同じ哺乳類である人間もそう。そして母も同じく直ぐにあげれる訳ではなかった。今はあげれるまでほ乳瓶で待機する。

 スタッフの監視の下、母は私を抱えつつほ乳瓶の飲み口を私の半分開いた口元に近づけた。赤ちゃんは本能的に口元にある物を吸うらしい。1分1秒でも早く栄養を摂取するためとか。ちなみに私には7歳上の兄がいるが、兄の時は吸うのが大変な授乳より楽なほ乳瓶で育った。

「兄弟揃ってほ乳瓶で育つのかなぁー」

 母のその考えはこの直後に否定される。飲み口が私の唇に触れた途端、急に口を閉じだした。

 あれ…口閉じた? おかしいな? その後も何度も飲み口を触れさせても吸う気配がない。

 バトンタッチでスタッフが与えてみた。少々強めに押しつけても閉じる口元が強くなる一方だった。そこでスタッフは決して口を開かない私の身体をつねった。もちろん覚えてないのだが「痛!」かった。

 いくらなんでも乱暴すぎない? そう思うかもしれないが、この行為は正式な産婦人科マニュアルにも書いてある「口を開かない新生児への対処法」らしい。(今もあるか知らないが当時はあったらしい)

 痛い。痛い。これはさすがに泣く。

 大声で泣き叫ぼうと口を開いたと同時に間髪入れずほ乳瓶の飲み口を入れた。

 結果は…母によると本能的に吸うことよりも、痛みで泣き叫ぶことよりも、弱い舌の力で必死に先を押し返していたらしい。この様子に母は何か命の神秘を感じたそうな。

 どうしてもほ乳瓶を吸わない。先のゴムを異物として認識しているのか頑固として拒否し続けた。そもそも目も開いてないような新生児が瞬間的に本物と偽物を見分けられるなんて考えられない。

「こんなの信じられない…」

 長年勤めてるスタッフも、ほ乳瓶持った医者も、口揃えてそう漏らした。(言っておくが今回は壁に投げていない)

 何より問題なのは、産まれてから一度も食事していないことだ。これでは餓死してしまう。

「さすがにお腹がへればほ乳瓶吸うでしょ?」

 スタッフ総一同そう思った。

 ところが私のストライキは2日目に突入した。

 生後2日目。赤子だが顔面は青白い。体重は4分の3を切る寸前。スタッフ一同も負けずに青白かった。もう危険領域に達してる。

 この子は何で吸わないんだ!? この2日間、母もスタッフも出来る限り対策を練った。

 本来なら点滴摂取だ。(あまりに小さすぎて針は刺せない)

 口元に直接粉ミルクを流し込む?(事態によっては大惨事を招く)

 井戸の呼び水みたいに母乳が出なくても吸わせてみたら刺激されて出てくるのでは?(必死に吸うが出てくる事はなかった)

 スタッフとのマンツーマン指導のもと母も母乳が出るように必死にマッサージ続けた。結構強めに押していたら何かが出てきた。けど、それは真っ赤な色をしていた。乳腺が損傷して血が流れ出したのだ。マンツーマンで赤ちゃんみたいに嘆き悲しんだ。

 生後3日目。努力の成果が出た。まるで今までの反動のように出るようになった。スタッフに見守られる中、私は一生懸命に吸っていた。1分1秒でも早く栄養を摂取するために。この様子に母は何か命の神秘を再び感じたそうな。

 よそのベッドより集中的な食事とケアが続いた数日後、母と私は濃厚な思い出を残した病院を後にした。(兄は母の知人宅に預けられ、単身赴任組の父はこの時こっちに帰っていたが、「赤ん坊なんて飽きるほど会うだろ」という理由で先に帰っていた)

 ここから先は皆さんが思いつくような極一般的な日常になります。

 少なくとも、この3ヶ月後までは……。

 ……なんて意味深に書き終わらせてみる。

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ピジョン

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【あとがき】

 このブログでは家族は登場しますが、話が進むにつれ、それほど多くは出てきません。

 理由は簡単。

 家族に許可も同意も無しに書いているので、そんな好き勝手には書けない…。

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