処理中に問題が発生しました。

 吾輩は根暗である。職歴はまだ無い。端の多い生涯を送って来ました。――みんなが当たり前に持っている見えないモノが生まれつき持っていない「私」。たった一つだけ足りない、それだけで日常は異常を孕み始める。常識というような空漠たる概念を、どう学べばいいか知らないし分からない。けれど常識はそれを決して許さない。これはつまらない絶望と希望で構成された日々の中で「私」を考え、そして失敗するまでの軌跡譚……という執拗な説明文から筆者(LD:学習障害)の悪癖が分かる共感度0%な長文ブログです。

タグ:医者

 突然だが、赤ちゃんが産まれてから約3ヶ月辺りを過ぎると区役所から「定期検診受診の通知」が届く。

 これは3,4ヶ月など特定の時期を過ぎた赤ちゃんの健康状態を見るもので、各地域の近くの病院や保健センターで無料で受診する。

 この定期検診では問診、心音、首すわり、股関節など9つを調べるのだが、その中に『大泉門』という項目がある。

 大泉門とは、おでこと頭頂部の間にある菱形をした柔らかい部分で、産まれたばかりの赤ちゃんはまだ頭蓋骨が未熟で完成しておらず、ここから1歳半まで掛けて周りの骨の成長による重なりによって閉じていくのだが、そうすると逆算から3、4ヶ月には「このぐらい閉じてるよね?」という規定数値が決まる。

 この項目では、その大泉門の現在閉じてる距離を測り、規定内かどうか調べる。

 距離が長かれ短かれ、ほとんどの赤ちゃんがパスする項目だが、私の場合は……。

「ちょ、ちょっとここで待っててください!」

 私のを測った看護師が診察室を突然飛び出た。

 ……またそういうパターンか。

 廊下へと消え去って数分後、その看護師は見るからに「ベテランの先生」を連れてきた。

 一連の話を聞いたであろうその先生も私の大泉門を測り、寝そべる私の腕を持ち上げて、何かブツブツと考えた末にこう言った。

「お母さん、お子さんには注射打てませんね」

「なぜですか?」

「いや、だって腕持ち上げたお子さん見てください」

 そこには首が座ってないにしろ有り得ないほど頭部が後ろに落ちてる私の姿があった。

 長らく一緒に過ごして鈍化した母も、これには「あー……」としか言えなかった。

「正直こんなにクラゲみたいな子、見たことないよ。これは脳に何か異常あると思うから、何処か専門施設で詳しく調べたら?」

 ズバズバと言い渡す先生。(※実際はもっとオブラート包んだ説明)

「はい、わかりました…」

 グゥの音も出ない母。

 とりあえず特殊なカルテを書いてもらい、後日に専門施設にて精密検査を受けることになった。

 それと同時並行に、様々な知人のツテから特殊な乳幼児の診療に詳しい先生に事情を話して直接診てもらえることになった。

 数週間後、都心から外れた閑静な地帯にある専門施設。ここで「ダメ」と言われたら「本当にダメ」と認定されるレベルまで来ている。

 専門医はどう見るか。

 私たち親子は入室した。

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国光オブラート

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【あとがき】

 言い渡された帰宅途中の電車内にて。


「あんた…怖くない?」


「グゥー」


「…そっか」
 
 ……という都合のいい妄想寸劇。

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『ビギナーズラック【beginner's luck】』……「賭け事などで、初心者が往々にして得る幸運」(引用:大辞林 第三版)

 よく映画やドラマで初めて宝くじを買った主人公が1等を当てる場面がある。

 逆に同じような奇跡に近い確率で主人公が命の危機を脱出する場面もある。

 まさに物語お決まりのパターンであるが、もし後者の確率が前者における確率と同等ならば、私も経験者の一人になると思う。

 ただ私の経験はちょっと早い。

 母が私を身ごもっていたとき「切迫流産」の危険性があった。生存確率は3割未満、医者でさえ慰めの言葉を考えるレベルである。

 もちろん今こうやって記事を執筆しているので、ネタバレする余地もなく「7割の悪運に勝った」わけだ。そのかわり予定日よりも早産する、もしくは予定日通りでも未熟児として産まれる、という別の形で問題は容赦なく帰ってきた。

 さて結果はどうだったか。

 予定日が近づくにつれ、中の胎児つまり私にある変化が見られた。

 何とこの場に及んで180°寝返ってしまった。つまり逆子状態になったのだ。これには医者も予測できなくて壁に向かって匙を投げた。

 さらに予定日が近づくにつれ、また新たな変化が見られた。

 何とこの場に及んで180°寝返ってしまった。しかもヘソの緒がよじれない往復リターンで。まさに対偶の逆子状態である。これには医者も予測できなくて壁から跳ね返ってきた匙を取った。

 いざ予定日になった。

 なのに産まれる傾向が見られない。これには医者も疲れすぎて投げた匙を引き出しにしまうので精一杯だった。

 何やかんやで長期不明滞在した私が外界へ産まれたのは当初から約1週間後の5月30日、平成になって最初の5月30日である。しかも産まれた時の私の身長も体重もその年の新生児平均値ピッタリだった。

 おそらく病院始まって以来のケースだったのか、その病院にいた関係者のほとんどが私たち親子を祝った。今の私が大好きな映画に例えると、まるでラララと民衆が踊る高速道路もしくはグレイテストなショーマンが歌うサーカスのようであった。

 この数多い病院スタッフの中で、担当した医者にとって大変喜ばしい事である。これはヨーロッパで古くから伝わる『銀の匙』でも贈ろうと直ぐ側にあった引き出しを開けたが、そこには備品の歪んだステンレス製しかなかったので、満面の笑顔で黙って引き出しを押し戻した。

 その後も母児ともに体調面良好。

 いえ、『体調面は良好』でした…。

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荒川弘
小学館

【あとがき】

 匙の部分は嘘です。本当です。

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