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 吾輩は根暗である。職歴はまだ無い。端の多い生涯を送って来ました。――みんなが当たり前に持っている見えないモノが生まれつき持っていない「私」。たった一つだけ足りない、それだけで日常は異常を孕み始める。常識というような空漠たる概念を、どう学べばいいか知らないし分からない。けれど常識はそれを決して許さない。これはつまらない絶望と希望で構成された日々の中で「私」を考え、そして失敗するまでの軌跡譚……という執拗な説明文から筆者(LD:学習障害)の悪癖が分かる共感度0%な長文ブログです。

タグ:キッチン

 正月のおせち料理が嫌いな人がいる。

 かく言う我が家も元々そうだった。

 発案者の父はおせちはおろか正月そして季節イベント自体も嫌がっていた。正月を祝うものは「崇拝」、そして季節的イベントは全て「洗脳」と言い捨てる始末。その時期その時期のイベントを祝う民衆に何か侮蔑の感情を抱いていた。

 ケーキも、そばも、その料理自体は普段食べていても、そこに何か特別な意味があることで一気に嫌いな料理になるのだ。

 だけど、それも10年ぐらい前から我が家の食卓事情も徐々に変更していき、この数年はわりとキチンとしたおせち料理を食べられるようになった。過去の父が決めたルールに自身が少し飽き始めたからだ。だから(事前に提案して)自身がOKだと思ったものは食卓に並べられる。

 そのおかげでクリスマスケーキも年越しそばもその祝う日に食べられる傾向になった。

 よそのアンチおせち主義者はどうなのだろうか。

 実は我が家の身近にも何例かいた。

 私や兄が生まれる少し昔、正月の挨拶回りで父が勤めていた会社の上司(副社長)宅に行った際、昼食がわりに食事を頂くことになった。

 その家庭はおせち料理に好きなものがないので、毎年正月にはカレーを食べるのがルールだった。もちろん理解できる理由である。ただ面白いのが、その家庭でカレーを食べるのは1年で正月だけなのである。

 普段もカレーが好きだから正月にカレーを食べるわけでもなく、むしろ逆なのだ。普段カレーを食べないから、おせちのない正月に食べることになったのだ。

 それは単にカレーという形をしたおせち料理ではないか。

 そもそもおせち料理は年に1回だけ食べられる豪華な料理をおめでたい正月に食べる習慣が始まりだ。その理論で行くと、年に1回だけ決まって食べるものは「おせち料理」の資格があるのだ。

 たしかにおせちを食べなかった期間の我が家の食卓には必ずおもちは並べられていた。鍋に入れる、お好み焼きに入れる、細かく切ってたこ焼きに入れる(オススメ)などおもちを使う場面は年間で何度もあるが、おもち単体を食べるのは正月ぐらいしかなかった。

 なんだ、昔からおせち食べていたんじゃないか。

 他にも正月はラーメンを食べる家庭もあったが、そこも同じく普段食べる習慣はなかった。もしかしたらうまい棒も毎年正月だけ食べていたら「おせち料理」に昇格するかもしれない(めんたい味を海苔で巻いて食べると明太子おにぎり味になって、断然美味しくなるからやってみてほしい)。

 桜も春にだけ咲くから春の風物詩だろうし、セミも夏にだけ現れるから夏の風物詩になる。

 もし季節に関係なく雪が降ったらどうなっていたか。

 まだ最初は異常気象として報道機関総なめで「狂ってる!」と言うかもしれないが、5年10年も続けばニュース番組の綺麗なお天気お姉さんが「お盆シーズンは北西からの強い風により冷たい雨もしくは雪が降るでしょう」と淡々に読み上げるかもしれない。

 それこそ昔では考えられなかった冬にかき氷を食べる行為も生まれるかもしれない。一見おかしく書いてみたけど現在どうだろう。暖房器具を点けながらアイスを食べる人は相当いると思う(自分がそうなんだが)。

 むしろ夏に食べるアイスより一段と美味しく感じてしまう。

 何でだろう、背徳感?

「タバコとお酒が最も美味しく感じるのは19歳まで」の理論と同じだろうか。

 実を言うと、まだおせち禁止期間のとき、正月に父に隠れて母と一緒にキッチンでミニミニおせちセットを食べていた(兄は偏食家なので不参加)。

 何でだろう、そのときのおせちが1番美味しかった。

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朝日新聞出版
2014-11-07

【あとがき】

 副社長さん宅に挨拶回り行った際、カレーを出されて父はボソッとひとつ言いました。

「おい。帰るぞ」

 言われた母も、そこにいる副社長さんもキョトンとなります。そして続く決め手の一言。

「俺、カレーがいっちばん嫌いなんだよねぇ」

 相手が副社長さんでも普段カレーが好きな父のセオリーは一切ブレません…。

 副社長さんはどう思ったのか。

「そ、そうか。渡辺くんカレーが嫌いなのか。それはすまないことをしてしまった。本当にすまん…」

 そう、めちゃくちゃ良い人なんですよ。

 しかもウチの両親の仲人さんでもあるのに、そんな態度に出たんですよ。横にいた母なんか「本当にすみません…本当にすみません…」と副社長さんに平謝りし続けて、一気に場の空気が悪くなりました。ほんと何考えてんだ…。

 終いにはキッチンにいる奥さんに「何か他のものはないか?」と聞きに行って、向こうもカレーの予定だったから他の用意がなくて「どうしましょう、カレーしかない」と困った事態になる悪循環。

「○○が好きな人に悪い人はいない」の応用で「おせちが嫌いな人に良い人はいない」と本当に思います。

 ちなみに父は仕事面では社外でも有名なぐらい超有能な技術者だったので、そんな程度では評価がブレませんでした。やっぱり社会は実力がモノをいうんですねぇ…。
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 晩ご飯の買い物から帰って、羽織ってたカーディガンをハンガーに掛けて、スマホとか財布とかズボンのポケットにある小物を出して、リビングの床に転がってた部屋着に着替える途中のTシャツとパンツ一丁姿で少し頭をポリポリ掻いていたら、掻いた右手の指にドロリとした赤黒い液体が何ヵ所にも付いていた。

 は、何これ、出血…?

 焦って頭皮の掻いた部分とそうじゃない部分を毛髪かき分け触りまくって出血元を探したが、出血どころか湿っている部分すらなかった。というより頭部に全く痛みがないのだ。そりゃそうだ、何か怪我した覚えがないから痛いはずがない。もちろん身体にも痛みや怪我はなく、そうなると余計に指の血痕がどこから来たのか怖くなった…。

 そもそも、これ血だよね…?

 そう思った理由に、怪我した際の血とは到底思えないほど赤黒くてドロドロしているのだ。まるで水気の少ない赤い絵の具のような類いの粘り気があり、指で広げると自分の知る血より広範囲に伸びた。もしこれが血なら、毛細血管や動脈部分ではなく静脈部分から出血している可能性が高い。動脈性出血ならサラサラゆえにピューピュー吹くのでまず違うし、毛細血管出血なら放っておけば1時間後には固まって塞がるが、静脈性出血ならドロドロゆえに固まりにくく塞がりにくい。まず無痛の静脈性出血してる時点で相当ヤバい…。

 匂いはどうだろうか。恐る恐る嗅いでみたら無臭だった。ご存じ血液には鉄分が含まれていて、独特な鉄の匂いが少しだけする。ごく少量なら見逃すこともあるが、これほど指の腹で広げているのに匂いが少しもしないのはおかしい。まあ舌で確認すれば手っ取り早いが血じゃなかったら嫌なので止めといて、現時点で血である可能性はかなり下がった。だけど正体がまだ分からない。

 今度はポケットから取り出した財布とスマホを調べてみた。細かい溝の部分すら付着してなかったので、つまり指に付いたのは部屋着に着替える途中だと判明した。上のTシャツは朝からずっと着ているので除外して、下の脱いだズボンを調べてみても赤いシミらしきものはなかった。そうなると付着はズボンを脱いで頭掻くまでのわずか数秒間に行われた。この事件を解くトリックはこの数秒間に潜んでいる!

 だんだん某眼鏡少年探偵みたいになってきたが、ここまで来ると真相を調べるよりも推理を楽しむことがメインになってきた。それに血ではないと判明した時点でこの液体が何かおおよその見当はついている。ただ知りたいのは一体いつどこで付いたのか。それさえ知れたら私は満足なのだ。

 現場確認でリビング一帯に目を配ったら、床にひとつだけ小さい赤い点があることに気がついた。もう拭き取られた後だったが、たしかに指に付いた色と同じ赤黒かった。点周囲の床は乾いていることから、時間的にティッシュで拭き取ったのであろう。ゴミ箱を覗くとビンゴで、赤いシミが付いたティッシュが入っていた。あとゴミ箱に被せたビニール袋の口元に広がって乾いた赤い液体の跡が残っていた。そうか、ズボン脱いだあと床のどこかに転がってるはずの下の部屋着探す途中でゴミ箱どかそうと無意識に持って、そして指に付着したのか。

 もう残りは赤い液体の犯人に訊くだけだ。

「おっ父、今日プリンターのインク入れた?」

「ああ、入れたけど」

「そのとき少しインクこぼした?」

「なんで知ってんの?」

 私の推理は見事的中した。

 あの赤い液体はプリンターの赤インクで、私が買い物に行っている間に父がインクのチャージをした際に失敗したのだ。その証拠をティッシュで吹き消して捨てた際、まだ乾ききってないインクの塊がビニール袋に擦り付いて、そこに偶然触れた私の指まで写ったのだ。

 今宵もまた難事件がひとつが解決された。だがこの世に事件がある限り、私の推理は終わらない…。

「さっきから何ニヤニヤしてるか知らねぇけど、まず何か履け」

「あっ…すいません」

 皆さんはお気づきだったか。つい推理に夢中になっていたが私はまだ下の部屋着を履いていなかった。もし30手前の男性がパンツ一丁でリビングをうろちょろ動きまわっていたら、皆さんは誰が犯罪者だと思いますか?

 訊くまでもなかったですね、さっさと部屋着を着て自室に去ります…。

 置いた財布とスマホを取って自室に向かう途中に今度はキッチンから母の大声が聞こえてきた。

「綿飴ー! お風呂沸いてるから早く入っちゃって」

「……」

 今度は洗面所で裸になった。

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マリア・コニコヴァ
早川書房
2016-01-08
楽天ブックス

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【あとがき】

 これ昨日あった出来事で序盤青ざめて調べてた話なんですが、ブログ記事にまとめようとしたときエピソード的にもっと面白くなるかなとミステリー風に挑戦してみたのですが、これがとんでもなく難しい…。

 文章の参考に本棚にある読み終わったミステリー小説数冊を取り出したのですが、「そうそう、ここが全ての事件の伏線になってたんだよな」「犯人が自白する度に証言が変わる理由、見事に騙されたな」「本当なんでエヴァンスに言わなかったんだろ…と思いながら読んでたけど、そうかそういうことだったのか…!! って大興奮したよなぁ」なんて普通に読書楽しんでました…(ミステリー面白いもんね)。

 おかげで(自己)満足できる記事になりました。そして世の中にいる推理作家たちの凄さがよく分かりました。アガサ・クリスティーは本当に天才だった…。シャーロック・ホームズの思考は人間じゃなかった…。江戸川コナンの世界の時間軸どうなってんだ…(それ違う話)。

 運動よりは食事、食事よりは読書、これから読書の秋なので、より一層楽しみになります!

 次は何読もうかな。

 とりあえず床に落ちてた雑誌でも読むか。こんな厚さ薄い雑誌買った覚えないけどな…。

 どれどれ、『タウンワーク』?

 ゴミ箱に捨てました。

 せ、先週号だったから…!汗
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 何年か前からキッチンが少し臭い日がある。流し台の排水口の奥が詰まっているのか独特の腐敗臭が漂ってきて、その中で料理を作らないといけなくなる。ヘタした日は食事中のリビングまで流れてくるから、なかなか厄介だ。

 一時期あまりにひどくなったのでラバーカップ(通称スッポン)で通りを良くさせたこともあるが、それも保って数日で、またすぐ戻ってしまう。

 水道業者に依頼しても良いのだが、ウチはマンションなので、その整備はマンション全体となる。それなら大家さんに申請することになるのだが、あいにく長居がたたって部屋の部分部分が痛んでいるのだ。そんな所を大家さんに見られたら、望まぬ展開でトラブルを招く危険性がある。

 ただ内密に水道業者が来て、隠密に排水口トラブルを解決してくれないだろうか。ベテランの水道業者だった祖父が生きていたら、電話1本ですぐに片づけてくれるのだが…。

 そんな中、数年に1度のマンション全体の水道水圧洗浄が来た。やった、これで悪臭とおさらばだ!

 ウチの点検日に水道業者に事情を話して念入りに長く水を流してもらった。これは個別の依頼では出来ないから本当に助かる。

 数日後、また悪臭が漂ってきた。

 おっと、これはどういうことだ。

 この不可解さに私はグーグル先生に質問を投じてみた。先生のお答えを要約するとこうだ。

「個別に対応できん問題は全体の問題じゃ。きっとマンション全体の水道に問題でもあるんじゃろ。そんなもんマンションぶっ壊さん限り解決などせん」

 少々言葉が乱暴な物知りジジイ風に書いてしまったが、つまりは個別の範疇を超えた案件らしい。

 仕方ないが何か進展が出るまで耐えるしかない…。

 もうヨソかウチか境界線の見えない臭いに囲まれて今日もご飯を食べる。

 それも数年目。普通に食べれるようになったので私たち家族が進展したようだ。

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山崎産業(Yamazaki Sangyo)

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【あとがき】

 水道トラブルは本当精神エグられる…。

 危険面でいったらガスが1番だけど、精神面でいったら水道が1番だと思います。

 整備不良で水道水がマズいマンションなんか相当エグられると思います。

 昔見た『仄暗い水の底から(2002年:日本)』というホラー映画で「水道水がマズい」「中階なのに雨漏りして水浸し」「蛇口開けたら髪の毛出てきた」的な住宅トラブル(?)が出てきましたが、たしかあれ


――(以下ネタバレ)――


2年前にマンション屋上の貯水タンク清掃について行ったマンションの女の子が事故で貯水タンクに転落して、その腐乱死体が今も屋上にある(本当にあるか語られていない)という設定でしたが、排水口から何か臭うウチのマンションは大丈夫だろうか…?

 あっ、そういえばウチのは浄水装備された貯水タンクが地中に埋め込められてるから不可能だわ。

 やっぱり様々な生活排水の混ざった臭いか…。

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※これはテニスのルールやその選手のスコアなど事前知識皆無の私が試合を見て頭に思ったこと・言ったことを(記憶する限り)書いていきます。そのため一部不適切な表現があり、また時系列もあやふやなのでご了承ください。

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 先月下旬に家族がWOWOW退会連絡するのを忘れたおかげで、去る日曜の9日(日本時間)に行われた全米テニス決勝戦中継をリアルタイムで見る環境が整った。大坂なおみという選手が日本人初出場するとのことで、ルール知らないが話題作りに見てみることにした。

 普段は誰も絶対起きない日曜の朝5時、リビングのテレビを最低音量でつけた。

 会場はアメリカのどこかで、客席にピアーズ・ブロスナンがいたことは分かった(ハリウッド俳優まで観に来るのか)。

 テニスを知らない私でも今回の大阪なおみ選手と戦うセリーナ・ウィリアムスの存在はどこか聞いたことはあった。

「(あれっしょ、セリーナ・ウィリアムスってめっちゃ強いんでしょ…?)(そらそうでしょ。だって見てごらんよ筋肉スゴッ!)」

 私の脳内があーだー言っているうちに選手二人はウォーミングアップを済ませ、本試合が始まった。

 開始早々実況者は「ボールの音が違う」とか言っているが普段のボールがどんな音なのか知らない。あと気がついたらポイント入ったが手前と奥のどちらが大坂なおみ選手なのか、よく見ていたつもりがよく分かっていなかった。

「(…なんか進んだんだよな!?)(なんか進んだんだよ!!)」

 また審判や向こうの実況が英語で何か大量に言ってるらしいが英語はよく分からな…「(あっ今ファール、ファールって言った!)(これぐらいの英語なら俺でも分かるわw)」

 またどちらかに点数が入ったらしいが画面左下にある点数表に気がついて、大坂選手に入ったことを理解した。

「(テニスはポイント入ったら15なのか)(そうそうたしか最初が15で次が30なんだよ、マリオテニスやったときそうだった)(俺くわし~!)」

 マリオテニスやったと言っても小学生ぐらいのとき家電量販店のゲーム体験コーナーで1回やっただけだ。

「(あれっ次40になった)(何故だ…何故急に10プラスになるんだ…?)」

 ポイントの細かい増え方まで覚えてなかった。

「(40の次が点数表ADになったけど、あのADって何?)(あっAD側の(忘れた)選手がポイント入れたら終わった)(えーと、つまり40の次取ったら王手的なやつなんだな)(窮地だね)(それな)」

 ともかくAD側がセットポイントを取って選手二人がベンチに座った。

「(今ので1セット終わったの?)(何回やれば勝ちなの?)(えーとー(よく分かんないけどたぶん)今のを1セットで全7セットのうち先に4セット取って、それで全5コースのうち先に3コース取ったら勝ちなんだよ)(だったら大坂選手優勢だね)(いやーまだ分かんないよ)」

 先ほどから会話らしきことを書いているが、この部屋には私一人しかいない。嘘みたいだが私は脳内でひたすら自分と会話するクセがある。つまり独り言ならぬ二人言、三人言で物事を即座に理解するためのツールの一種でもある。

 脳内が会話している間に向こうの中継カメラが客席側を写して、大坂選手を見守る彼女の母親を写した。

「(あれが大坂選手のお母さんか)(ちょっと宴会でかなり呑んだ翌日のJUJUさんみたいな)(ちょwww誰かに似てると思ったけどそれだわ)」

 中継カメラが次に写した上空のスタジアム屋根にはCHASEってロゴが書いてあった。 

「(CHASEって会社知らないけど、ここCHASE社のスタジアムなんだね)(ねーこういうとき会社の名前って重要だよね)(もし夢グループ(通販会社)がオーナーだったら夢グループスタジアムになるのかな)(ドリームグループスタジアムwwwアメリンカンドリーム感すごwww(バーグハンバーグバーグ(WEBメディア)がオーナーだったらバーグハンバーグバーグドームになるな)(おふざけの極みwww)」

 それから私は試合中を横目に会場内にあるPOLO、ROLEX、JPモルガンなどを見つけていった。

「(ここはROLEXが公式時計なんだね)(これがオリンピックだったらOMEGAになるんだよね)(オリンピックでしか見かけないよ2年毎のOMEGA)」

 もちろんだがROLEXもOMEGAも持っていないし実物も見たことがない。

 それからセリーナはベンチに座りながら審判に文句言っていた。

「(ここでテキトーな吹き替え入れたら面白いな。昔のホットペーパーのCMみたいな)(懐 か し w w w)(“こな大人数の前でピアノ弾くんホンマ無理やわぁ…こんなん聞いとらんし先言うといて!?”)(そうそうそういうのだった)」

 点数表が私の想像と違う数字表示をし始めた。

「(やっぱこれ違うじゃんか)(んじゃ何ポイント取っての優勝なん?)(そんなの知らん)(いいかげんだな…)」

 そのまま見ていたらセリーナが急にラケットを地面に叩きつけた。

「(ラケットぶっ壊した! すんごい曲がってるし泣いてる!!)(しかもラケット壊したら相手有利になるんだ)(でも威嚇パフォーマンスになるんじゃない?)」

 ここで私は冷蔵庫の麦茶を取りにキッチンに行った。その間にセリーナは審判に直談判し始めた。

「(何かいつのまにかセリーナが審判と揉め始めた)(何か今セリーナからドーターって聞こえたんだけど)(聞き間違いじゃね?)(やっぱ?)(何故ここで娘が出てくるw)」

 後で知ったがトンチンカン発言は現実に言っていた。 

「(今度はゲームペナルティとやらをくらったぞ)(奥からレフェリーとやらまで来たで)(プロ野球だったら大乱闘だな)(サンライズ(スタン・ハンセンの入場テーマ曲)流してねぇ)(↑デレーレーー ↓デレーレーー ↑デレーレーー ↓デレーレーー)(パパパー↓ パパパー↑ パパパー↓ パパパー↑)」

 脳内はあまりに分からない競技に対して飽き始めたのか茶化していた。まるで興味のない授業をふざけ倒す小学生のようで、まるっきり昔の自分だった。どうやら20年経っても性根は変わってないらしい。

 いつになったら勝敗が決まるのだろうか。早起きでまぶたも重くなって、耳の遠くからブーイングらしき群衆音を認識したとき、その試合の先制攻撃で大坂選手が打った。

「やりました!!! 大坂なおみ選手、全米オープン優勝しました!!!」

「(…へ?)(…へ?)(試合…)(終わった…)((おおおおおお!!!!!!))」

 試合が終わった直後、セリーナが審判に指差して何か一言言った。

「(“お前覚えてろ”)(シンプルでよろしい)」

 何がどうなって試合が決まったのか、2時間近く見ていても結局分からないまま同じテニスコート内で受賞式が行われた。

 その途中でも「負けて明後日の方向を見ているセリーナ」「勝った直後に小分けのバナナ食べてサンバイザーの上に倒す乗せる大坂」「解説者席の伊達公子より詳しく解説するリポーターの松岡修造」、眠たい自分にとってカオスだった。

 大坂選手がお母さんに会場から直接報告に行った。それまでクールだったお母さんが悲願の優勝を果たした娘とハグして号泣していた。

「(ラスト歌い終わったJUJU…)(やめろ)」

 受賞式は比較的感動の場面で、トロフィー前に泣く大坂と背中押すセリーナ。この構図は素人でも迫る感情を呼び起こした。

 いざトロフィーを持つもリアクションと今後の進行が分からなくて困惑する大坂選手に共感した。報道陣のカメラがまだ目の前にいて去るわけにはいかない…。ただそれに答えるインタビューの99%はやはり英語で、同じ日本でもインターナショナルに活躍する彼女のその存在は大変遠くて、肉体の私と脳内にいる限りの私たちで惜しみない敬意を込めて拍手を贈った。

 イベントが終わったら急に眠たくなった。でも、その前に気になることがあった。

「(ツイッターどうなってんだろ)(見てみよ!)」

 そのとき私たちは知らなかった。地上波では松岡修造が醤油ダンスとやらをしてることを…。

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実業之日本社
2015-08-11

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【あとがき】

 大変遅れましたが…大坂なおみ選手、全米テニス優勝おめでとうございます!

 そして大坂なおみ選手、セリーナ・ウィリアムス選手、試合を見守っていたテニス関係者、全国のテニスファンの皆様、そしてJUJU関係者の皆様、誠に申し訳ありません…。

 改めて文章に書いてみたら自分の情緒大丈夫か心配になってきましたが、同時に「本当はもっとアホなこと言い合ってたんだけど全部まで覚えてないことが惜しい…」と思ってるので見た目より大丈夫そうです。
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 休日のデパートとか出掛けると極稀に自分にとって目に留まる人を見かける。

「とても品の良い人だなぁ」
「着ている服装が素敵だなぁ」
「本当に美味しそうに食べるなぁ」

 そして私はその相手に少しだけ惹かれるのだ。

 でも、それは相手が女性にだけ起こるわけではなく男性にでも起こるし、そういう恋愛対象としてどうこう的な話ではない。普通に一人の人間として惹かれるのである。

 そういうとき、まず私は何故その人に惹かれるのかから考え始める。もしかしたら単純に好みな顔だったとかあるかもしれないが、それなら上のような回りくどい感想は抱かない。つまり何かしら別の理由があって相手に惹かれるわけだ。

「背筋がスッと立ち上がってる姿に品を感じる」
「自分の着たい服を着こなすセンスが羨ましい」
「目の前にある食べる味わう楽しみを知ってる」

 そのときによって生まれる理由は様々だが、そこから相手の品格とやらを見いだして相手を尊敬して、もしそれ以上のものを感じるようであったら、私はその相手のファンになったと認識するのだ(当日すれ違った人にそこまで感じたことないが)。

 一般的にはアイドルや歌手、小説家など自分とは遠い世界の人に抱く感情なのだが、もし友人や恋人、先輩後輩など身近な人でもその人に尊敬の念を抱いていたら、自分はその人のファンなのだ。

 そして問題はここからで、自分が誰かにそう感じるように自分は誰かからそう感じられたことはあるのか。誰かの中に自分がいたことがあるのかどうか。

 人間生きている間はなるべく愛されたいものだ。道端の犬猫とかなら比較的高い確率で愛されるけど、家族以外の言葉を発する系のものにはまだ愛されたことはない(逆に道を歩けばセミやカナブンから突然ハグされるし、蚊においては好きすぎて血まで吸われる)。

 このように人より経験値の少ない道を辿ってきたのだが、ただ一度だけ異性から顔をまじまじと見つめられたことがある。あれは高校生ぐらいのとき、学校の帰りに晩ご飯の買い物する母と待ち合わせして、スーパーで買ったものをテーブルでビニール袋に詰めていたとき、向かい側から幼稚園ぐらいの知らない女の子が私の顔をジーッと見つめていた。最終的には向かいのお母さんが荷物詰め終わって手を引っ張られても私の顔を見つめていた。

 横にいた母も気づいていたらしく「良かったじゃない、一目惚れされて」とまで言ってきた。あきれて「一回りも下の子に惚れられても大して嬉しくないわ」と返すと、「でも同じ年齢が運命の人とは限らないからねぇ」と急にメルヘンなことを諭してきた。

 自分より一回りも下の人と付き合う人はどういう人なんだろう。

 幼少期に見たアニメも遊んだゲーム機も違う人と対等に付き合える神経など残念だが私には持ち合わせていない。だけど将来あの子が何かしらの形で再び出会えたのなら、紛れもなくあの子は童話のヒロインだ。

 我が家に着いて、キッチンに買い物袋を置いてからリビングで座って休憩し始めたとき、エアコンのリモコンを持った母が私の顔を見つめながら私を呼んだ。

「ちょっと、こっち向いて」

 今日はどうした、やっと魅力が開花した日か。 

「あんた鼻クソ付いてるわよ」

 ……。

 ほじったら取れた。

 鼻クソかよっ!!

 きっとあの子は裸の王様を見抜いた子だ。

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【あとがき】

 前半素敵そうな教え書いてからの後半クソ展開。

 クレームつけたいかもしれませんが当時気づかないまま半日過ごしていたのだから、その分の対価で目をつぶってください…。

 現実「愛するより愛されたい」という逆キンキキッズ現象が人の本音にあると思いますが、全員から愛される方法って実は簡単です。

 今の世の中は愛されたい願望の人(受動側)がほとんどだと思います。もし世の中を狭い部屋にした場合、誰も話しかけようとはしません。そこに誰にでもフレンドリーな愛する人(能動側)が現れたらどうでしょう。

 人間心理的に愛されたい人は愛する人の味方になるので、結果的に全員から愛されます。それは一国の大統領でも、カルト宗教の教祖でも、その経緯はほぼ同じで関わった以上は「悪法も法なり」です。

 誰かから愛されたい気持ちは人として当然の気持ちで、何もおかしいことではありません。もちろん世の中には、そう苦しむ人を誹謗中傷する悪人がいますし、苦しいからこそ手を握ってくれる心優しい善人もそれ以上にいます。だけど、その気持ちに漬け込んで貴方の弱い手に自分の都合を握らせる悪魔がほとんどです。

 悪魔を見抜くことは大変難しく、希少な善人の顔を忠実に再現した仮面を被っています。だから誰が仮面なのか誰も分からないし、ただでさえ冷静でない弱った心で識別するのは困難です。

 けれど唯一仮面を見抜く方法があります。仮面は心が空腹な貴方に魚を与え、真の善人は空腹な貴方に釣りを教えます。

 もし今の貴方が空腹なら私は貴方を救えません。顔も名前も知らない貴方を救いにいくなど出来ないからこそ一人で生きていける手段をここに書きました。それがせめてもの釣りの教えです。

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